INTERVIEW

演奏における技術について

― アナレクタレーベルHPインタビューより抜粋

 

1980年初頭に、ユーディ・メニューインと演奏するようになりました。偉大な音楽家と演奏し、フレーズ、リズム、また様々なニュアンスについて尋ねることは若い時分の私にとって大変貴重なことでした。彼は深みのある人物で、私は本当に多くの刺激をもらい、さらに彼を通じてコルトーやホロヴィッツに代表される偉大なるピアニストたちに通じる「伝統」を感じることができました。

 

コルトー、ホロヴィッツ、ルービンシュタインは驚くべき想像力をつかって自由自在に表現することができました。私達にとって、過去に立ちもどり彼らのような偉大な音楽家達の演奏を聴くことは大切なことです。たとえば、ケンプの録音を聴いて、彼がピアノに向かう時になにを考えていたのかを知ろうとすることや、彼の演奏の中にある精神性、彼が纏った周囲のその気配にじっと耳を澄ますということです。とは言っても、彼らが絶対的な「真実」を手にしていたと言うわけではありません。ただ、そこには最大限の想像力でもって表現しようと挑んでいる彼らがいて、そして単なる「よい」「ミスのない」演奏以上の、我々の心を捉えて放さない音楽特有の特別な時間を創りだすことに成功しているのです。

 

そういった文脈において、近年、「テクノロジー」と「テクニック」の意味が混同されているように感じます。「テクノロジー」とは、ただ何かをするために使うもののことで、本来の「テクニック」は、単に正確に弾く事ではなく、先に触れたルービンシュタインのように、彼の中に表現されるべきイメージを実際に音にするための能力なのです。

 

「伝統」と「現在」について語ることが難しいのは、自身が個人として、また音楽家として、どのあたりにいるのか見定める必要があるからです。それを知るためには、ただ独りで練習するだけでなく過去にどのような演奏がなされていたのか、現代においてどのような演奏がなされているのか知ること、そして他の音楽家との間で意見交換すること、これらはすべて、音楽家にとって課せられた果てしない学びの道程の一部であるといえます。

 

覚えておくべき重要なことは、私達が音楽で何をできるかということではなく、音楽が私達にどのように働きかけるのかということです。すなわち、音楽を私達が引き寄せるのではなく、私達が音楽に寄り添っていかねばなりません。それには、正式な教育を受けると同時に内面の成長も促さなければいけない。これは私の根本にある揺るがない考えです。